お尻歩き

愛犬が後ろ足を前に突き出すような姿勢で、お尻を床にスリスリとこすりつけて歩いている姿を見たことはありませんか?
どこかユーモラスなこの歩き方は、俗称「お尻歩き」とも呼ばれています。
事情を知らなければどこか可愛らしく見えるこの仕草ですが、実はお尻に違和感や痒みを感じている状態です。それを知ってしまうと、笑って見過ごすことなどできないのではないでしょうか。

犬がお尻歩きをしていたら、まずはここをチェック!

愛犬が床にお尻をこすりつけて歩いていたら、まずは寄生虫や病気の可能性がないかをチェックしてみましょう。

1.ウリザネ条虫や豆状条虫などの条虫に寄生されているときの症状は……

  • 肛門とその周辺をやたらとなめている。
  • 肛門から白いヒモのようなものが出ている。
  • 糞に白いヒモのようなものが混ざっている。
  • 下痢をしている。
  • 食欲が落ちている。
  • 毛のツヤが悪くなっている。

2.肛門嚢(こうもんのう)に炎症が起きているときの症状は……

  • 肛門の近くに赤く腫れている部分がある。
  • 排便をしづらそうにしている。
  • 糞をしようとしているのに突然走り出すことがある。
  • 肛門を気にしたり、なめたりしている。

3.肛門周囲腺(こうもんしゅういせん)に炎症が起きているときの症状は……

  • 肛門が赤く腫れている。
  • 排便をしづらそうにしている。
  • 肛門から異臭がしている。
  • 排便時にキャンキャンと鳴くことがある。

1~3のいずれも、記載した症状のすべてが起きるわけではありません。しかし、一つでも該当する箇所がある場合は、すみやかに獣医さんに診察してもらったほうがよいでしょう。

1の寄生虫が原因の場合は、駆虫薬を投与して治療します。

2と3の場合は軽度であれば抗生物質などの投薬だけで治ることがほとんどですが、症状が進んでいると外科的な処置が必要になる場合があります。いずれにしても早期に治療を始めることが一番です。なるべく早めにかかりつけの動物病院で受診してください。

肛門嚢(こうもんのう)に分泌液が溜まりすぎている場合は

お尻歩きをしているけれど、それ以外は普段と何も変わらない場合、肛門嚢に溜まった分泌液の排出が滞っているのかもしれません。

肛門嚢とは犬の肛門の左右にある肛門腺(こうもんせん)という器官から分泌されるニオイのある液体をためておく袋のことです。分泌された液体はマーキングや排泄のたびに肛門嚢から少しずつ排出される仕組みになっていますが、小型犬や中型犬の中にはこの機能が衰えている個体が少なくありません。

野生のスカンクやイタチなどと違い、人間と暮らす犬たちにとって強烈なマーキングはもはや必要がなくなりました。また、多くの犬種が小型化されていくうちに、分泌液を排出するための筋肉が発達しなくなり、機能はどんどん退化する一方に。さらには運動不足や肥満も排出能力の衰えに拍車をかけています。

いずれにしても、肛門嚢にたまり過ぎた分泌液を犬が自力で排出できないのであれば、人間による手伝い――肛門腺しぼりが必要になります。これを怠って放置していると肛門嚢が炎症を起こし、肛門嚢炎を引き起こしてしまいます。

肛門嚢炎を早期に治療しないと症状はどんどん進み、肛門嚢にたまった膿のせいでコブのように膨らんでしまうことも。最悪の場合、コブが破裂して穴が開いたり、腫瘍化する可能性まであってとても危険です。

愛犬をそのような可哀想なめにあわせないためにも、飼い主さんの手で定期的に肛門腺をしぼってあげることは、重要なケアの一つ。

肛門腺しぼりはコツさえつかめれば、自宅で行うことは難しくありません。しかし、上手くいかない場合は獣医師やトリミングの際にしぼってもらうこともできますので、あまり深く悩む必要はないのです。

肛門腺しぼりは1ヶ月に1回が目安

肛門腺に分泌液がたまる時間は犬によって違いますが、おおむね1ヶ月に1回程度の頻度でしぼっていれば、肛門嚢が腫れて炎症を起こすことはまずありません。

やたらとお尻を気にしていたり、床にお尻をこすりつけ始めたらすぐにお尻をチェックして、お尻歩き以外に気になる症状がない場合は、すぐに肛門腺しぼりをしてあげましょう。
肛門腺から分泌される液体には、糞のニオイとは異なる独特の臭さがあります。また、分泌液の色には個体差があり、通常は水っぽくて薄茶、灰色、黄色などの薄い色味をしていますが、たまり過ぎている場合はドロリとして濃茶、黒茶などの濃い色をしていることが多いようです。

排出される液体はトロリと垂れる程度の少量で済むこともあれば、勢いよく飛び散るほど大量に溜まっていることもあります。どの程度の量がたまっているのかは、しぼってみないとなかなかわかりませんが、肛門嚢が膨らんでいる場合は、やはりそれなりの量がたまっていると思ったほうがよいでしょう。

もし液体の中に血液や緑がかった膿が混ざっている場合は、感染を起こしている可能性がありますので、すぐに獣医師に相談してください。

慣れないうちはシャンプーのときに肛門腺しぼりを行うと、臭い液体が飛び散っても簡単に洗い流すことができます。このほうがあわてずに対処することができますが、体調の優れない犬や高齢になった犬の場合、シャンプーそのものが体調悪化をまねくことがありますので注意してください。

肛門腺のしぼり方

1.まずは犬の尻尾を片手(利き手ではないほう)で持ち、肛門をあらわにします。

2.利き手の親指と人差し指で肛門の下3分の1あたりを押さえます。肛門を時計の文字盤にたとえると、右利きなら親指が8時、人差し指が4時の位置です。このとき、肛門そのものではなく、その脇の毛が生えている部分を押さえてください。少し固い部分を指先で感じたら、そこが肛門嚢です。

3.肛門嚢の位置を確認できたら、親指と人差し指で肛門をつまむようにしてぐっと力を入れます。シャンプーのときは直接指でつまむことができますが、室内でしぼる場合はティッシュなどを指と肛門の間にはさんでおきます。(肛門腺の分泌液を受け止めるため)

4.肛門から液がでてきたら、しっかりと最後までしぼりきりましょう。肛門腺の分泌液はかなり臭いので、室内で実施する場合は衣服や周辺に飛び散らないように注意してください。

5.しぼっても液体が出なくなったら、これで終了です。シャンプーと同時であれば、きれいにお尻を洗い流してあげましょう。室内の場合は、ウェットティッシュなどを使って毛に付着した分泌液を拭きとります。

肛門腺しぼりをするうえで注意すること

肛門嚢に分泌物が大量にたまっている場合、嚢が固くなりすぎてしぼってもなかなか液体がでないことがあります。この場合、強くしぼりすぎると犬が痛みを感じてしまいますので、力を加減してください。

痛がっているのに無理矢理しぼると、犬は肛門腺しぼりを恐ろしい行為だと認識してしまいます。これではせっかく犬の健康のために肛門腺しぼりをしているのに、意味がありません。

なかなか液体が出ないときは焦らずに、まずは固くなった肛門嚢をもみほぐすようにマッサージしましょう。それから再度指でつまんでしぼると、液体が出やすくなります。

肛門腺しぼり成功の秘訣は、飼い主がリラックスすること

肛門腺しぼりは痛みをともなうことがあるため、嫌がる犬は少なくありません。嫌がると犬の体が緊張し、それによって肛門が固く閉じられてしまいます。すると、なおのことしぼりにくくなってしまうでしょう。

なんとしても肛門腺をしぼらなければ!と飼い主があせればあせるほど、犬も緊張してしまうため、上手くいかなくなるのです。

肛門腺を上手にしぼるコツは、飼い主が穏やかな気持ちでトライすることなのかもしれません。