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現代社会はストレス社会と言われています。人はその中でストレスを抱えながら生きていますが、人とともに暮らす犬もまたストレスに苦しんでいます。一般的に「犬の問題行動」と言われるもののほとんどは、ストレスが原因の行動です。

したがって、犬のストレスを減らすと、「問題行動」も激減します。犬が次のような行動をしていないか、気を付けて観察してみましょう。

犬の問題行動チェック

  • 小さな音に反応してよく吠える。
  • ピーピー鼻鳴きする。
  • わき腹あたりを後ろ足でカッカッと掻く。
  • 頻繁に排尿、排便する。
  • 室内でマーキングや粗相をする。
  • マウンティングする。
  • 前足をしつこく舐める。
  • 尻尾を追いかけてぐるぐる回る。
  • 物を壊す。
  • 石などの食べ物でないものを食べる(異嗜)。
  • 食事に執着する、食欲がない、食べむらがある。
  • 眠りが浅い。
  • 夜中に吠える。
  • ハァハァとパンティングする。
  • 歯をカチカチ鳴らす。
  • リードを噛む。
  • しょんぼりする。

 

動物病院に連れて行って診察台の上に乗せたときに、肉球が湿っていることに気づくことがあるでしょう。ハァハァとパンティングする犬もたくさんいますし、一気にフケが浮いて毛が抜けます。これらは一時的なストレスによる症状です。

散歩中、飼い主さんのリード操作がよくなかったり、犬が興奮しすぎたりしてストレスがかかっているときには、次のような行動が見られます。

散歩中、気をつけたい犬のストレス行動

  • ひんぱんにマーキングする。
  • 散歩中にウンチを3回以上もする
  • よく体をブルブルっと振るわせる。
  • 首のあたりをカッカと掻く。
  • 飼い主の後ろにぐるっと回り込む。
  • ジグザグに歩く。
  • 落ち着きなく匂いをかぐ。
  • やたら拾い食いをする。
  • マウンティングする。
  • 飼い主に飛びつく。
  • リードを噛む。
  • 円を描くように走り回る。
  • 尻尾を噛む
  • 突進(ダッシュ)する。

 

これらは一時的なストレス行動といえますが、慢性的なストレスによって、こうした行動を起こしやすくなるということにも注意しましょう。

他方で、長期間ストレスにさらされた犬には、些細なことでよく吠え、眠りが浅くてすぐに目を覚まし、しょっちゅう下痢をし、拾い食いがひどく、シャンプーをしてもすぐに体が臭くなり、アレルギーや皮膚疾患があるというような症状がよく見られます。ストレスの原因をよく見極めて、可能な限りなくすことが大切です。

ストレスの原因には次のようなものがあります。

主なストレスの原因

  • 体の不調や病気。
  • 悪天候。
  • 発情。
  • 急激な環境の変化。
  • チョークチェーン、スパイクカラー、ジェントルリーダーなどの犬具の使用。
  • アジリティ、ドッグダンス、オビディエンストレーニング。
  • パピーパーティー。
  • ドッグランなどでのボール投げや追いかけっこ。
  • 犬や人間との乱暴な遊び。
  • 犬のまわりでの暴力、怒り、いらだち、攻撃。
  • そばに子どもがいる。
  • 家に人間がよく出入りする。
  • 人がたくさんいる場所に連れて行かれる(ホームセンター、里親会など)。
  • 大きな音(工事の音、車やバイクの騒音、犬猫のケンカの声など)。
  • トリミングやシャンプー。
  • ケージや犬小屋などに閉じ込められる。
  • リードで係留される。
  • 6時間を越える留守番。
  • 多頭飼育で人口過密。
  • 家族からの隔離。
  • 相性が悪い個体と暮らす。
  • 家庭内不和(家族同士のケンカ)。
  • 飼い主の精神的不安定。

 

診察台の上の犬

診察台の上でストレス状態にある犬。耳を横に広げ、不安そうな表情をしています。

この中には、病気や悪天候など、飼い主の努力によって避けられないものもありますが、他方で避けられるものも多くあります。

飼い主の努力によって軽減できる、ストレスの原因

激しい遊び

乱暴な遊びやボール投げ、ドッグランでの追いかけっこ、アジリティなどは、犬が喜んでいると思っている飼い主さんがほとんどです。

ですが、こういう激しい遊びは犬を興奮させます。興奮状態になると血中アドレナリン濃度が高まり、ストレスがかかった時と同じ状態になります。

すると体では防御反応が起こりますが、それが正常な状態に戻るのに数日かかります。その間にまた激しい遊びで興奮すると、なかなか正常な状態に戻らなくなります。

ストレスレベルが高い状態が続くことになるのです。そういう犬は、アレルギーや心疾患、消化器疾患などにかかりやすくなり、噛みつきなどの攻撃行動が増えます。

走り回る犬

 

激しく走り回っている時に、犬はこの写真の犬たちのように目をかっと見開いて、口を大きく横に引き、口の端にしわを寄せます。「笑顔」と間違いやすいこの表情を「ストレススマイル」と呼びます。これは犬が興奮しすぎてストレスがかかっているということですから、すぐに介入して落ちつかせてあげましょう。

パピーパーティー

最近は、犬の社会化を目的として他の子犬と触れ合うパピーパーティーが人気です。ですがこれは子犬にストレスをかけるだけでなく、デメリットの方が大きいということが指摘されています。

たくさんの子犬がなじみのない狭いスペースに入れられて、犬のマナーを教えてくれる成犬がいない状況では、激しい遊びや喧嘩が起こります。弱いものいじめの連鎖が起こり、やられたらやり返すというよくない行動を学びます。

ドッグランの犬

長時間のドライブや観光

何時間ものドライブや登山、観光やイベントなどに犬を付き合わせるのは、犬にとっては迷惑なことです。犬は静かでルーティンな暮らしを好みます。

ゲージへの閉じ込め

ペットショップで犬を買ったら必ずケージを勧められます。そして、犬をひとりで留守番させるときや、夜寝るときに、ケージの中に入れるように言われます。

こうしたケージ閉じ込めは、ストレスのもっとも大きな原因のひとつです。狭い場所に閉じ込めて行動の自由が奪われた動物は、常同行動や自傷行為などの深刻なストレス症状を発症します。ケージは撤去するか、でなければ扉を取り去って出入り自由にしてあげてください。

トリミング・シャンプー

毛が伸び続ける犬はトリミングが必要ですが、トリミングサロンでは犬を長時間同じ姿勢のまま拘束します。体のあちこちを触り、不快なことをします。シャンプーもまたストレスになります。シャンプーは全くやらなくても問題がないばかりでなく、かえって皮膚や被毛を改善します。流行のスタイルは犬に関係ありません。カットは一度に少しずつ、自分でおこなうのがベストです。

長時間の留守番

長時間の留守番は、社会性が高い犬にとっては、大きなストレッサーになります。留守番が6時間を超えると、ストレス行動が増えてきます。長時間留守番をさせる場合は、シッターを頼むなどしましょう。

ここに取り上げたストレスの原因を、できるかぎり減らすことが重要です。人間社会のルールを一方的に押し付けられた暮らしは、犬にとってはあまりにも不自由なものです。自由に散歩することもできず、食事や排泄も人間の都合によって制限されます。人間と暮らすというだけで、ストレスがのしかかってくるのです。
ですから、そのうえ更に余計なストレスをかけないように、最大限配慮してあげることが必要です。

愛犬とのコミュニケーション方法

犬を撫でてあげるタイミング

飼い主の不適切な接し方は、犬のストレッサーの主要な原因のひとつです。犬をわしわしと乱暴に撫でまわしている人をよく見かけますが、そのときの犬のボディランゲージを見ると、例外なく嫌そうなしぐさと表情をしています。

嫌がる犬

この犬は、飼い主に乱暴に触られたため、顔を背け、舌をペロッと出しています。「嫌だ、やめて」と言っているのです。犬にはやたらに触らないようにしましょう。わたしたちも家族からしょっちゅう撫でまわされたら不愉快に感じるでしょう。

犬が自分から近づいてきて、撫でてくれとお腹をみせたり、頭を近づけてきたりした時にだけ、耳の後ろやお腹、胸など犬が好きな場所を、落ち着いてゆっくり撫でてあげます。静かに寝ている犬に自分から近づいて、撫で回したりなどはしないようにしましょう。

また、触らなくても、常に犬の方を気にしてじっと見つめたり、意味もなく声をかけたりすると、犬は落ち着かなくなります。そっとしておいてあげることもまた優しさです。

動物は全般的に、騒々しい人や落ち着きがない人は苦手で、動きが少ない静かな人を好みます。なるべく静かに、スローモーションのように動くよう心がけましょう。

怖がりな犬・ストレスがかかった犬への気配り

怖がりな犬や、ストレスがかかっている犬の前では特に、より一層の気配りと注意が必要です。大げさな動作とともに、大きな声も出さないようにしましょう。怒った声はもちろんのこと、単なる大きな声や、大げさな褒め言葉も犬を興奮させます。犬がいるところでは静かに話しましょう。

犬にはむやみに声をかけないようにします。犬同士のコミュニケーションは、音声言語よりもボディランゲージをよく使います。意味の分からないことを言われ続けるのは、我々人間にもストレスです。

犬に語りかけるときは、優しく、ささやくようにしましょう。犬は人間の何倍も耳がいいので、小さな声でもよく聞こえています。

反対に、命令口調は犬をビクつかせるので注意しましょう。命令したり指示を出したりして、犬をコントロールしようとする発想は、きっぱり捨て去りましょう。

攻撃行動や過剰反応の原因は恐怖や不安です。したがって、犬に恐怖や不安を与えないような接し方をすることが重要です。「ノー」、「ダメ」、「イケナイ」などの否定的な言葉は、犬を不安にします。

他方で甲高い大きな声で大げさに褒めるというのも、犬の興奮をあおります。常に静かで穏やかな態度で、犬を安心させてあげましょう。

なにか困ったことをした場合、どうすればいい?

犬がなにか困ったことをした場合、その行動には必ず訳があります。その行動を叱ってもまず直ることはありません。

もし叱ったことで犬がその行動をピタッと止めたとしたら、犬を怖がらせていると考えましょう。それを続けていると、飼い主の様子を見てビクビクする犬になります。飼い主が犬のストレッサーになってしまえば、犬にとっても飼い主にとっても好ましくない事態になります。

ストレスレベルが高い犬は、些細な刺激に反応して吠えたり、食べ物でないものを食べたり、物を破壊したりなど、困った行動をたくさんします。これらは、ストレスが減ってくると徐々になくなってきます。飼い主はいちいち反応せずに、イライラしている犬の気持ちに寄り添ってあげましょう。

犬もどうしたらいいかわからずに、苦しんでいるのです。そういうときに、その行動を一時的になくすための対症療法を試みても、根本原因のストレスが減らない限りは、問題は解決しません。それには時間が必要です。ゆっくり待っていてあげましょう。

気をつけていても、日常生活の中でストレスは少しずつ溜まっていきます。溜まったストレスは解消しないといけませんが、その前にストレスの原因となることを徹底的に避けるのが基本です。解消する端から新たなストレスをかけるといういたちごっこになっては意味がないからです。

性ホルモンによるストレスはきわめて深刻ですから、不妊・去勢手術を行ってあげましょう。手術をしないと、メス犬は発情の度にストレスがかかり、オス犬は発情したメスがいることでストレスがかかります。そのうえ、乳腺腫瘍や子宮蓄膿症、肛門周囲腺腫など、生殖器の疾患にかかりやすくして、病気によるストレスリスクを上げます。犬の幸せのために、かならず不妊・去勢手術をしましょう。

ストレスの解消法

日々のストレスを解消する最良の方法は、ゆったりのんびり歩く散歩です。散歩に勝るものはありません。リラックスするために行うのですから、速足になったり、犬につられて一緒に走ったりしては逆効果です。小型犬でも大型犬でも、お年寄りが歩くような速度というのを目安にしましょう。

そして犬が匂いを嗅いでいるときには、止まって待っていてあげます。河川敷をのんびり歩くのはリラックスにもってこいです。

ゆっくり歩いていては運動にならないと思う方もいるでしょう。ですが、犬にとっての運動は、長いリードで自由度の高い散歩をおこなうことで十分足ります。あえて人間が走らせる必要はありません。散歩中にディスクやボール投げをすると、せっかくののんびり散歩が台無しになってしまいます。

風を感じ、木々のざわめきを聞いて、空気のにおいを嗅ぐ、そういう散歩をすると、犬だけでなく人間のストレスも解消できます。ぜひ試してみてください。