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猫を飼っている世帯での平均飼育頭数は1.76匹(一般社団法人ペットフード協会平成25年度)に対して犬は1.26匹です。多くの方が1匹だけでなく多頭飼育をしたいと思っていることが伺えます。猫にとっても友達が家にいることで留守番が苦にならなかったり、社会性を学ぶ良い機会です。

中には気がつけば5匹、6匹になっていたという方もいるでしょう。ただしあまり多すぎると猫同士のトラブルが起こることも少なくないので気をつけなくてはいけません。具体的には多頭飼育のストレスで毛を舐めすぎてハゲが出来たり、非常に攻撃的になってしまうことがあります。

猫は多頭飼いについてどう思っている?

猫の祖先と考えられているリビアヤマネコなどの野生のネコ科動物は群れを作らない単独行動動物で、一旦親離れした後は特別な時期(発情期など)を除き他の個体とは全く接触しませんでした。その後一部のヤマネコが人と共生をし始め、イエネコへと変化し、その過程で社交性を身につけました。都市部では「猫の集会」と呼ばれる、空き地に複数の猫が集りあたかもミーティングを開いているような光景が見られるようになりました。

しかし猫が人間や他の猫と一緒に暮らすようになったのは長い生物の歴史からするとつい最近のことです。そのため、まだまだ多頭飼育に対して強いストレスを感じる猫も多くいます。特に人と住んでいるケースでは人には好意的でも、猫vs猫になると攻撃的になることもあります。

あなたの愛猫が新しい猫と仲良くできるか

こればかりは実際に新しい猫と会ってみないとわかりません。人間がこれから他の人と一緒に暮らせと言われても、すぐに答えられないように猫にも相性があります。実際に新しい猫が来てから「やはり飼えない」では困りますので、引き取り元のブリーダーさんまたは保護団体にすでに猫がいる旨を伝え、新しい猫が1週間ほど自宅でホームステイできないか相談するのが良いでしょう。

基本的には若齢の猫ほど新しい猫と良い関係を築け、「1匹→2匹」よりも「2匹→3匹」の方がスムーズに馴染みやすいでしょう。10歳以上(人間換算で54歳)の高齢猫がいる場合はストレスで体調を崩す恐れがあるので、新しい猫を受け入れるのはお勧めしません。

猫の飼育頭数の上限

各猫のプライバシーを守る必要があります。猫が一人(一匹)になりたい時に逃げ所になる「お気に入りスペース」を各猫が確保できる頭数が上限になります。このお気に入りスペースは近すぎたり、隣の猫と仕切りがないと休まりません。そのため以下の式が基本的な飼育頭数の上限になります

>猫の飼育頭数の上限=自由に出入りできる部屋の数—1

例えば3LDKのマンションに住んでいる場合リビングは各猫の共通スペースとして、残りの3つの部屋が各猫のお気に入りスペースになります。猫立ち入り禁止の部屋はこの数に入れないでください。この式に当てはめると多くの家で3匹ぐらいが上限になると思います。またトイレを置くスペースも考えなくてはいけません。理想的なトイレの数は以下の式になります。

理想的なトイレの数=猫の数+1

この式はあくまで目安のひとつですので、部屋のサイズが小さかったり部屋がとても多い家では当てはまりません。どんなに自宅が大きくても、多くても5匹ぐらいが無理なく猫も過ごせ、また世話できる範囲ではないかと思います。

初対面の注意

最初から新しく加わった猫(後輩猫)と顔を合わせると喧嘩をしてしまう可能性があります。少しずつ先に暮らしていた猫(先輩猫)と後輩猫を慣らしていきましょう。

1.まずは後輩猫をキャリーから出さずに家に入れます。先輩猫は匂いで新しい猫がやってきたことを察知するでしょう。

2.後輩猫の存在に馴れたらキャリーに入れたまま、さらにタオルをかけ目を合わせられない状態で先輩猫に合わせます。
先輩猫は匂いを嗅いだり、キャリーの周囲をグルグル回るでしょう。
先輩猫がシャーっと威嚇するようであればその日はタオルを取らず後輩猫を隔離部屋に戻してください。

3.匂いに慣れたら、いよいよ対面させます。この時先輩猫は自由に行動できるようにしていいですが、後輩猫はキャリーの中に待機させましょう。
先輩猫は自分の縄張りを何よりも気にするからです。この時無理に抱っこして後輩猫のキャリーに先輩猫を近づけてはいけません。
先輩猫の自分の意思で後輩猫に近づくのを待ちましょう。

4.次の段階は後輩猫をケージから出し、短時間自由にさせます。いきなり喧嘩し始める可能性もあるので、目を離さないでください。
この時おやつをあげるのも良いでしょう。「この猫といる時はいいことがある(おやつがもらえるな)」と学習するとよりスムーズに仲良くなれます。

5.その後は徐々に一緒にいる時間を延ばしていきましょう。
特に先輩猫が飼い主さんへの依存度が大きい時(いつも後ろについてくる、一緒に寝ているなど)は、後輩猫が完全に自由に家の中を行動するようになった後も一緒にいる時間を今まで変わらず確保してあげましょう。

多頭飼育を成功させる環境作り

  • 高さの異なる台:高さの異なる猫用の休息場所を複数箇所設置しましょう。猫が使用できる空間が格段に増え、猫にとって家が広く感じます。市販のキャットタワーでもOKです。

  • 休息場所はちょうど猫1匹分:ちょうど猫が1匹収まるサイズ感が重要で、中途半端に広いと取り合いに発展し喧嘩の原因になります。

  • トイレやご飯へのアクセスを考える:例えばトイレへの道が1本しかなく、そこに敵対する猫が道を塞いでいるように座っているとトイレを我慢してしまいます。トイレやご飯は他の通路からも辿り着けるような場所に設置しましょう。

  • たくさん遊ぶ:特に若い猫はエネルギーに満ちていますので、先輩猫にちょっかいを出しますが、高齢な猫にとってはしばしば迷惑でしょう。飼い主さんが積極的に遊ぶことで先輩猫の負担を減らしましょう。

  • 他の猫を襲う猫に鈴をつける:他の猫が危険を事前に察知できるよう、鈴をつけましょう。首輪が引っかかると危ないので首輪は圧がかかると外れるものにしましょう。

  • フェロモン製剤フェリウェイ:猫のフェイシャルフェロモン(頬から出ているフェロモン)を参考にして製造されたフェロモン製剤です。多頭飼育による緊張を和らげます。

  • 匂い交換:仲良しの猫同士は体をこすりつけ匂いを交換します。飼い主さんに頭を押し付けてくるのも同じです。猫が使っているタオルなどでお互いの猫を撫でることでこの匂い交換を補助することができます。

  • まとめ

    猫は群れで暮らす歴史が浅いことから、多頭飼育で強いストレスを受ける猫もいます。

    私も猫が好きなので多くの猫と住みたい気持ちは大変よくわかりますが、あまり多すぎると近所の迷惑になりますし、何より猫達もストレスが高まり幸せ度が下がります。

    今回お伝えしたことを踏まえて猫の多頭飼育を考えるときっと良い環境を築けるでしょう。


    参考:Blackwell’s Minute Veterinary Consult Clinical Companion Canine and Feline Behavior