B-3_nekonokiokuryoku1

部屋に入った瞬間に「あれ、何しに来たんだっけ?」とやることを瞬間的に忘れてしまうのは誰しもが経験したことがあるでしょう。
私たちは少し環境が変わったり、電話が急にかかってくるなど突発的なことが起こったりすると直前の記憶が抜けてしまうことがあります。
反対に昔の家の住所など、殆ど必要がない記憶が残っていたりします。

それでは猫はどのくらいの記憶力があるのでしょうか。

猫の短期記憶は人間の20倍!?

短期記憶とは、短時間でしか持続しない記憶のこと。
例として、直前に覚えた電話番号は電話をかけた瞬間に忘れてしまうことなどが挙げられます。
人間の短期記憶は平均30秒とされていますが、猫はどうでしょうか。

猫の短期的な記憶を調べた2007年に発表された論文では10分以上も記憶が持続しているという結果がでました。
実に人間の20倍以上です。

実験方法

① 猫が障害物を前足でまたいだ瞬間にフードを与えて動きを止める
② 障害物を地面に引っ込める
③ 数分間その状態で待たせる
④ フードを下げ、猫が前進する時の後ろ足の動きを観察する

B-3_nekonokiokuryoku2
(実験イメージ図)

この実験では、猫の前に障害物をおき、前足が障害物を越えたところでフードを与えて数分そのまま待ってもらいます。
その後、障害物を地面に引っ込めてから猫を歩かせると後ろ足が障害物を避けるか否かを観察しました。
結果として10分以上待たせても猫は障害物の位置と形を覚えており、もとにあった障害物を避けるように後ろ足を高くあげました。

猫はこの実験が得意らしく、他の四足歩行の動物よりも長い時間、障害物の位置を覚えていました。
猫は脳の運動を司る部分が発達しており、前足が経験した関節の動きを正確に脳に伝えることができるため、記憶も長く続くのではないかと考察されています。
何度も家の同じ場所で頭をぶつける私よりも、猫は記憶力が良いのかもしれません。

ただし、2006年の他のグループによる論文では、人間と比べるとかなり短い結果が出ています。

この研究では、猫がどの箱におもちゃが入っているか当てるゲームをしました。
猫の前に4つの箱を並べ、その中の1つに当たりのおもちゃを入れます。
その後一定時間を空けて、どこにおもちゃが入っているのかを当てさせます。

この場合、猫を10秒以上待たせただけでも大きく正解率が下がりました。
この実験で猫は正解した時にご褒美としておやつをもらっていますが、おやつぐらいでは猫のモチベーションが長続きせず、成功率が下がったのではないかと考えられます。

この2つの研究から、猫は条件付きであれば人間の20倍の記憶力を発揮しますが、実験方法を変えると大きく結果が変わってしまうことがわかります。
2つめの研究では猫は「場所は覚えているけど、別に行きたくないにゃ」と思っているかもしれません。

猫にも長期記憶はある!

長期記憶は、数時間から一生に渡って覚えている記憶です。
短期記憶に含まれる情報の多くは忘れ去られますが、一部は長期記憶として脳の中に残ります。
何度も得た同じ情報(例:通勤通学の車窓からの風景)、印象的な物事(例:目の前で見た交通事故)は長期記憶として脳に定着されます。

もちろん猫にも一生続く長期記憶があります。
猫の場合、反復して得た同じ情報の典型的な例としては、缶詰を開ける音があります。
猫缶以外の缶詰を開けると、ものすごい勢いで寄ってきて期待の眼差しを向けられ、困った経験をしている飼い主さんもいるでしょう。

猫にとって印象的な物事は、やはり命の危機や嫌なことに関することになります。
一度人間からひどい目にあった猫は人間に一生懐かない、病院で嫌なことがあると何年経っても覚えているなどです。
猫は通常こういった記憶を生涯忘れることはありません。

子猫時代の記憶はいつからある?

人間が最初に覚えている幼少期の記憶は、平均3〜4歳頃からです。
猫の場合は生後2〜7週を社会化期といい、他の猫や動物について知る大事な時期です。
この社会化期に人間や犬など他の動物と仲良くしていると、その後もその動物を怖がらなくなりますし、ハムスターや鳥などの小動物でも獲物としてみなくなります(詳しくは「猫と他の動物が仲良しになるのはなぜ?」をご覧ください)。
この時期から記憶が残っているとすると、猫の8週齢は人間の年齢に換算すると2歳なので、猫の方が人間より早い段階の記憶が残っているといえます。

次ページ>>猫は飼い主を覚えているの?