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月の満ち欠けのように大きさが変化する黒眼(瞳孔)と宝石のような輝きをもつ虹彩は猫の眼の大きな魅力です。
大きな眼が猫の可愛さを引き立てていることは間違いないでしょう。
今回は猫の眼の機能面について、人間と比較してみましょう。

1. 明るいところでの視力は良くないにゃ~

実は猫はあまり視力が良くありません。
大きな眼なので遠くまで見えそうですが、実際には視力は0.3程度と考えられています。

猫の眼は暗い時に真価を発揮するので、明るいところで測定すると人間よりも視力は劣るのです。
猫は光を感知する細胞(桿体細胞)を人間の約3倍持っており、わずかな光でも見える反面、明るすぎる場所ではぼやけて見えてしまうからです。
日中、猫が黒目を縦に長くしているのは眩しすぎるので、入ってくる光の量を減らしているのです。

2.暗いところではよく見えるにゃ~

猫の眼は暗いところでの視野を維持するために特化していると言って良いでしょう。猫の眼は黒目のサイズを最大にすると、人間の3倍以上の光を取り込むことができます。

さらに、タペタム(輝板)と呼ばれる反射装置を網膜の裏に仕込んであるため、一度通過した光を再度取り込み、明暗情報を40%増加することができます。
ちなみに、夜中に猫にライトを当てると眼が黄色く光るのはタペタム(輝板)が光るからです。

猫は、これらの機能により人間の見える限界より6倍暗い場所でもよく見ることができます。
そのため、たとえば下の画像のように、猫は暗闇の中でもねずみの姿を捉えることができます。

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暗闇での見え方(イメージ) 【左:人間/右:猫】

3.色を識別することは苦手にゃ~

猫は色盲であると考えられています。
人間は光の3原色、赤、青、緑を感知しますが、猫は赤を感知することが苦手で、色を感知する細胞(錐体細胞)の数が人間の約5分の1しかありません。
これも猫は夜に狩りをするため、色を見分ける能力が必要ないためです。
実験でも猫は黄緑色の光に対する反応が一番強く、周波数が低い赤色は見えにくいことがわかっています。

下の画像は猫の見ている風景をシミュレーションしたものですが、赤を認識しづらいため、全体的に色あせた淡白な印象を受けます。
また、猫は近視なので遠くはぼやけ、視野は人間よりも若干広くなっています。

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人間と猫の見え方の比較(イメージ)【上:人間/下:猫】
画像出典:WIRED

猫の他に犬、牛、馬などの殆どの哺乳類は2原色からなる世界を見ています。
むしろ3原色の世界が見えるのは日中、森の中で果実を採取する霊長類の特徴です。
ちなみに鳥類や爬虫類の中には人間には見えない紫外線を感知する細胞があり、より多彩な4原色からなる世界が見えていると考えられています。

4.動体視力がスゴイにゃ~

猫は動体視力が高く、素早く動くものに対して反応することができ、高速移動中でも正確に獲物を追跡することができます。
人間と比べてどのぐらい動体視力が優れているかは不明ですが、人間がどんなに高速でねこじゃらしを振っても猫は見失うことがありません。
動体視力は動きを追う眼だけでなく、入ってきた情報を処理する脳の機能も関係しています。猫はバランス感覚も異常に高いので、身体平衡と眼球運動を調節する前庭小脳が発達しているのでしょう。

下の画像は極端ですが、人間の動体視力では見失ってしまう速い動きをするおもちゃでも、猫は動きを追うことができますし、近ければピントも合わせることができます。

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動くおもちゃの見え方(イメージ)【上:人間/下:猫】

5. 視野が広いにゃ~

人間の視野は前方向200度ほどだといわれていますが、対して猫の視野は250度あり、猫の方が広くなっています。
また、いわゆる「両眼視野」という両方の眼で立体的にみることができる視野が120度あり、これは猫と人間は同等ですが、猫は肉食動物ですから、獲物との距離感を捕らえるために両眼視野の範囲が他の動物に比べて広くなっています。
対照的に馬は350度周囲が見えると言われていますが、ほとんどが「片眼」の視野です。
馬は草食動物なので、相手との距離を計る(両眼で見る)必要はなく、逆に捕食動物の接近に気付けるように特化しているのですね。


このように、猫と人間は違う世界を見ていることがわかりました。
猫のフードを赤い着色料で美味しく見せても猫にとっては意味がない、といわれる理由がお分かりいただけたでしょうか。

人間は五感のうち視覚が最も発達しており、外部情報の約80%を視覚に頼っているといわれています。
対して猫は視覚の情報量は20%程度といわれており、猫がもっとも得意なのは聴覚です。
盲目になった猫でも家の中をぶつからないで歩けるのもヒゲの触覚や聴覚のおかげです。

猫の眼は、人間よりも視力は低く、あまり色も識別できないものの、暗いところで本領を発揮し、動体視力が高く、視野も広いという特徴があります。
つまり、猫の目は獲物を追うのに特化されている、といえるでしょう。